『さよなら歌舞伎町』『夜があけたら』出演、湯舟すぴかさん独占インタビュー!!

 【インタビュー企画第2弾!!】

『さよなら歌舞伎町』『ストロボ・エッジ』『夜があけたら』など、インディペンデント、メジャー、舞台など幅広く活躍されている気鋭女優・湯舟すぴかさんへの独占インタビューに成功致しました!!

すぴかさんの映画への熱い想いが伝わってくるインタビューとなりました!!
是非お楽しみくださいませ!!


―この度はインタビューを受けてくださりありがとうございます!!心から感謝致します。

いいえ。むしろ私にお声がけいただくなんて光栄です。ありがとうございます。

―早速なのですが、多くの作品に出演されておられる湯舟すぴかさんですが、主な映画作品への出演作群を教えていただけますでしょうか?

まだそんなに多くはないんです。わたしはOLをやっていたところから、脱サラ後に小劇場に足を踏み入れた人間で、映像の方に来たのは3年前くらいなので、まだ若輩者です。最近の劇場公開作だと武田梨奈さん主演で川村清人監督が撮った『夜があけたら』や、廣木隆一監督の『さよなら歌舞伎町』、『ストロボ・エッジ』などがあります。

尾野真千子さん主演の『心中天使』や、片岡礼子さん、塚本晋也さん出演の『溺れる人』を監督されている一尾直樹監督のショートムービー『私のいない世界 RENDEZVOUS』にも主演させて戴きました。
『私のいない世界 RENDEZVOUS』 
https://vimeo.com/129960736

―インディペンデント映画から、メジャー映画まで出演作が幅広いですね!
『夜があけたら』の昭美役はとても強烈でしたが、どのように役作りをされましたか?

正直、台本いただいたときに、どうしよう…こんなアプローチの役やったことないし、どうやろう、と思ったんですが、ふと昭美には昭美なりの正義というか、彼女のなかの回路があるんだろうなと思って。客観を一度捨てて、相手をどうしたいのか、なんの目的でそこに居るのかを考えました。出番は短いですけど、主人公を突き落とす重要な役どころだったので、ちゃんと役割を果たさないとマズいなと。
他にも、衣装や小道具は自分で原宿や下北沢を巡って、見た目にも頼らせて貰いました。アクセサリーやインパクトのある服は、わたし提案で川村監督にOKを貰いました。

―確かに、ご自分でコーディネートされた見た目のインパクトもありますし、「主人公を突き落とす」様が鮮烈でした。主人公役の女性との表情合戦という意味でもとてもスリリングなシーンでしたね。

話は変わりますが、『さよなら歌舞伎町』の撮影現場の様子はどうでしたか?すぴかさんは以前ツイートで「とてもいい現場だった」とおっしゃっていたと思うのですが。

そもそも廣木隆一監督とは、2012年の『海辺の町で』が最初なんです。3.11以降の福島で撮った作品で、まず「芝居をしないこと」を求められました。カメラの前にただ居ることって、お恥ずかしい話ですが、それまでやったことがなかったんですね。

相手役の門脇麦ちゃんとのシーンで長回しがあったのですが、NGテイクで「寄り添ってはダメ」と言われたことをよく覚えています。そのとき頭で芝居をしていたからです。福島の風景や波音、そして目の前の麦ちゃんにゆだねて、ただ存在すること、そういう大切なことを教えてもらったと思っています。

『さよなら歌舞伎町』は、そんな『海辺の町で』からのご縁で現場に呼んでいただけたんです。田口トモロヲさん扮するデリヘル店長の元で働く嬢役でした。台本上では役名もなかったのですが、現場で名前を付けてくださったり、緊張を解こうとしてくださったのか肩を揉んでくださったりして…(笑)とても愛にあふれた現場だなと思いました。

廣木組は他にもWOWOWの現場にも呼んでいただいたり、実は何度もお世話になっていますが、スタッフワークも素晴らしいんですね。撮りきるのも早いし、なにより廣木さんのジャッジがすごく早いんです。いつも仕事をしているメンバーなので、信頼感があって、それで特有の雰囲気があるのだとも思います。そんな中でお仕事させていただけるのは、本当に幸せだなと思っています。

―門脇麦さんとのお話すごい!!

廣木監督の現場はあたたかいということを、すぴかさんも含めて色んな俳優さんがおっしゃっています。そういう監督さんの下で演技表現するのは楽しそうですね。

麦ちゃんは撮影当時、まだ『愛の渦』のクランクイン前でしたが、あの頃から惹きつけるものが確固としてあって。顔合わせの日、たくさん人がいる部屋に入ったのに、吸い込まれるようにして彼女を見てしまったのを忘れられません。
そういう意味では、すごくニュートラルに現場に居れましたね。実際フォトグラファー役として、現地の瓦礫のなかで私もシャッターを切っていたんですが、冬の寒い時期でもそこに佇む麦ちゃんを撮っているのは不思議と辛くありませんでした。

廣木さんは、本当にすごい方で、どんな役の人のこともちゃんと見てくれてるんです。でもその分、「せっかく呼んで下さったのに、ヘマ出来ない」と思って、特に最初の頃は現場で縮こまっていたように思います。やっと最近になってリラックスして現場に臨めるようになりました。とにかく、現場で受けた愛は現場でお返しするしかないので、芝居で還せるように精進したいと思っています。

―廣木監督の現場はあたたかく、しかし誰よりも本気を見抜く現場には緊張感もみなぎっていそうですね。

門脇さん、廣木監督をべた褒めするインタビューになってきたので(笑)、すぴかさんのことをもっと聞いていきたいと思います。

―すぴかさんが演技表現していく上で最も大切にしていることなんですか?

すみません(笑)つい好きなひとの話になると熱が入ってしまって。
大切にしていること…なんだろう、あらためて問われると、難しいですね。うーん……「嘘をつかないこと」、ですかね..

これはほんとに最近きづいたことなんですけど、たぶん「どう見られるか」ばかり考えていたんですね、昔は。だから、薄っぺらい、どっかで見た事あるような、型にはまった演技になりがちだったんじゃないかなと。
…上手い俳優になりたかったんです、以前は。でも、最近は、上手い訳じゃないんだけど…何故か目で追ってしまうような、そんな俳優こそが素敵だなと思うようになって。そういうひとって誠実で、相手役のためにきちんとそこに居れているんですよね。だから「ちゃんと、本当にしている」。…これ、つたわりますかね?(苦笑)本当だから、芝居に嘘がないんです。

―それというのはメソッド演技に近い形での演技表現ということですよね。その人に成りきる、という。最近なら『百円の恋』の安藤サクラさんがまさに「成りきる」という意味でとてもわかりやすい例だったと思います。

サクラさん、大好きです。ご本人は柔和な、とても素敵な方なのに、あんなにパワフルでゴリゴリな役が出来るのはすごいですよね。

成る、というか、そこに「入る」感覚の方が私は近いような気がします。現場の環境、それはその場所の光とか、物とか、臭いとか…いろいろありますけど、そこに行って初めて見えてくるものもあるというか。
例えば、ただ美術のひとつとして置いてあるだけのリンゴがあったとして。その役にとっては嫌な思い出のアイテムかもしれないし、好物かもしれない。恋人を想起させるものかもしれないし、悲しみの象徴かもしれない。そんな風に、取り巻くものに役が造られるところも大きいと思うんです。もちろん現場に入る前に、具体的なもので役を充たしていないとダメなんですが。

―成るではなく、入る、ですか。演技論のようになってきてド素人の私には難しい領域に入っていきそうです。

お手本にしている俳優さん、好きな俳優さんなど、いらっしゃったら教えてください。

好きな俳優は、高峰秀子さんです。最近、昔の映画を観てみようと思って借りたりして。高峰さんは、芯のある女性の強さがあって好きなんです。

―なるほど。『浮雲』はご覧になりましたか?あれほどまでに緊迫した男と女のやりとりをみられることは映画史上においても稀です。

はい、観ました。まだ成瀬巳喜男監督のは少ないですが、個人的には『乱れる』の葛藤する高峰さんがすごく好きで。ラストはもう、倒れ伏しそうでした…。演技もそうですが、佇まいが凛として美しいところも好きなんです。

―わかります、倒れ伏す。

すぴかさんのお好きな女優さんのお話を伺えたところで。少し話を変えたいと思います。

―今の日本映画界、特に日本のインディペンデント映画界について思うことを教えてください。日本映画界の生の現場で、すぴかさんは何を感じられているのか。

やはり、インディペンデント映画は監督の「これを今つくらねばならない!」という想いや衝動が詰まっていて、熱い作品が多いですよね。もちろん商業でもそういう作品がないわけではありませんが、題材や演出面でいろんな制約もあるでしょうし。

ただ、インディペンデントも現場の予算や配給の面で大変だと思います。蓋を開けてみたら口コミで拡がるパターンもありますが、いずれにせよ、やはり観てもらわないとと思います。最近は映画祭に掛かってはじめて注目してもらえることも多いですよね。逆に掛からないと始まらないというか…。最近は良かれ悪しかれクラウドファンディングが増えてきていて、すこし流れが変わってきているのかもしれませんが。

現場については、個人的には役どころにもよりますが、監督と遣り取りをさせて貰いやすい印象があります。一緒に案を揉んで試させて貰えたり、そういう楽しさはありますね。

でも、最近思うようになったのは、商業もインディペンデントも、どちらも根本は変わらないんじゃないかなということです。その作品を観て「観てよかった」「いまこれが必要だった」って、届くべきひとのもとへ届いたら素敵だなと思うんです。
だからこそ、より多くの方に観て欲しいし、いろんなものを劇場から持って帰ってもらって、大切なひとと議論したり、日常のとらえ方がすこしだけ変わったり、そんなふうに日々を豊かにすることができたらって。

いまはネットの時代で、無料の楽しいコンテンツが満載で、なんでも受動で流れ込んでくるんですよね。でも劇場には、自ら足を運んで、お金を出して観に行かなくちゃいけない。しかも答えを提示されるんじゃなくて、観て自分で考えなきゃいけない。だからこそ、すきなものを見つけて選ぶ楽しさを、そしてスクリーンで体感する喜びを、知ってもらいたいなと思っています。

―なるほど。

やはりひとえにインディペンデント映画とはいっても一長一短あるわけですが、おっしゃられていた「商業もインディペンデントも根本は変わらない」理由についてもう少しお伺いしたいです。

ええと…さきほどお話ししたことは、俳優として映画に対する精神のようなものについてなんです。演じる側としては、ただ作品や役と真摯に向き合うことに変わりはありませんから。今度は具体的にどのような観点でお話すればよいのでしょうか。
私は、インディペンデントじゃないとダメだとか、商業だからダメだとか、そんな風には思って欲しくないというか…

―そうですね。

…おそらくJODIEさんの、本当は切り込んで聞いてみたいことも幾分か分かってはいるつもりです。商業映画の題材や、キャスティングに対して疑問を持つ声もあることも。でも、興行で回収できることが前提で企画されたものですから…「売る」前提でお金を集めたものは、「売れ」なければならないんです。そこが悲しくも厳しい現状です。商業映画は娯楽でありながらビジネスです。だから作り手も売れなければ、次の創作の場を失ってしまいます。反対に、人がたくさん入れば、またさらに面白い映画をつくれるかもしれないんです。製作資金が増えれば、単純にできる選択肢も増えますし。

そしてインディペンデントは、攻めた脚本やオリジナルの手法を試すことができたりする一方で、資金繰りが苦しかったり、撮影日数や人手も限られるため、できること、借りられるもの、現場の人数など、たくさんの制約が出てきます。俳優にとっても様々な意味で負担を多く強いられることもあります。
でも、わたしはどちらが悪いとか、どちらが良いとかは思っていません。それぞれに素晴らしいところがあって、それぞれに課題がある。ただそれだけです。わたしは両者の間で、観客をつなぐ架け橋のひとつになれたら、すごく嬉しいと思います。特に今年は学生映画の現場にも初めて参加したので、感じたことはたくさんありました。けれど、面白いものが作りたい、ただそれだけなんだなあと改めて思いました。

―すぴかさんのおっしゃられている通り、「想いや衝動」が詰まった映画は、それがインディペンデントであれ、商業映画であれ関係がないというか、多くの観客の心に届いてはなさないのだと思います。

すぴかさんが最近出会った熱い映画、旧作新作問わず教えてください!

熱いというか、ほんとに細胞レベルで震撼したのは、塚本晋也監督の『野火』です。わたしは戦争映画って苦手なんです。あまり陰惨な描写そのものが得意な方ではなくて。でも、『野火』はいま見なくちゃいけないと思ったし、観てよかったと思いました。あとから戦車や銃器の裏話を聞いて更におどろいたんですが、インディペンデントでも、ここまでやれるのか、と思いました。

すこし前ですが『お盆の弟』『ソレダケ that's it』『ローリング』も好きです。映画俳優って本当にいいなと思ったし、なにより映画が好きな方々が創りあげた幸せな作品だなと思いました。
それと卒業制作ですけど、新宿武蔵野館で掛かった『SLUM-POLIS』には正直びっくりしました。映画界に祝福されたひとかもしれないです、二宮健監督は。彼とは今年のゆうばり国際ファンタスティック映画祭で初めてお会いして作品を拝見したのですが、映画の蓄積が半端ないんですよね。末恐ろしいひとです。

―ニノケンさん和製スピルバーグといっても過言ではないのでは。すでに巨匠の感がありますよね。オタクなところも同じ(笑)

今年も、挙げてくださった作品群が証明するようにインディペンデント映画が熱いですね。もっとたくさんのインディペンデント映画が公開され、ヒットしていくような流れになっていくことを願うばかりです。

再びになりますがインディペンデント映画、商業映画、舞台にと幅広く活躍されているすぴかさんですが、今後どのような女優になっていきたいと考えておられますか?

そうですね、活動の範囲は特に制限している訳ではないので、今後も需要があるなら何でも挑戦してみたいです。自分では思ってもみなかった役をいただけたり、台本という2次元のものを実際に立ち上げて、キャラクターや世界を拡げられる、そういう現場にしかない刺激や驚きが、ほんとうに身に余る幸せで、もちろん大変なこともありますが、できるかぎりずっと現場に必要とされる俳優でありたいと思っています。まだ未知ではありますが、わたしにしかできない表現というものを見つけていきたいです。

―すてきです。同じくすぴかさんの言葉のチョイス、多分読者の方も思われると思うのですが、すてきです。

ありがとうございます。
わたしも、まだ未熟者ながら、こうして自分の想いを改めて、具体的にお話させていただける機会をいただけて嬉しいです。

―ありがとうございます!!
最後に、映画ファンの皆様にメッセージをお願い致します!!


次々に趣のある素敵な映画館が閉館してゆく時代、そして映画づくりが困難を極める日本映画界において、わたしにできることは少ないかもしれません。でも、皆様には是非これからも、たくさん映画を観てほしいです。もちろんスクリーンで、です。

観てもらわなければ、わたしたちは作り続けることができません。わたしはこれからも素晴らしい作品が生まれるのを目撃していたいし、可能であればその作品の中で生きていたいです。

わたしはこれからも俳優としてやるべきことを精進してゆきます。もっともっと観ていただけるように、己を磨いてゆきます。生活のなかの影に少しでも光を灯せるような、また、光のなかに在る陰を見落とさずに見つめることもできるような、そんな俳優になりたいです。よろしければ、今後ともお付き合いよろしくお願いいたします。こんなに長いインタビューを、最後まで読んでくださったあなたに、こころからの感謝を。ありがとうございました。


―今回はお忙しいなか、ひとつひとつの質問に丁寧にお答えくださってありがとうございました!!心より感謝を申し上げます!!

【湯舟すぴか プロフィール】
1986年宮崎県出身。2010年、谷賢一演出の舞台にて小劇場デビュー。その後2012年より映像にも活動の幅を広げ、インディペンデントから商業映画までフリーながら精力的に活動。主な出演作には映画『夜があけたら』『さよなら歌舞伎町』『ストロボ・エッジ』、ドラマ『ソドムの林檎』『平成猿蟹合戦図』『となりの関くんとるみちゃんの事象』などがある。名前は本名。現在、いくつかの出演作が公開待機中。

Twitter @sea_horse_
DEMO REEL https://youtu.be/gsRWE_jQlVc